くだけた場面でだけ使われる、標準的な言い方から外れた語のことです。英語の slang をそのままカタカナにした言葉です。
間違った言葉という意味ではありません。
「辞書には載っているが、改まった場では使わない語」がスラングです。
英語の発音は イギリス /ˈslæŋ/(スラング)。
アメリカ英語では ng の前で母音が持ち上がり、「スレイング」に近く聞こえます。
「スラング」の意味|まず結論から
スラングは 英語 slang をそのまま借りた外来語です。
日本語では「俗語」と訳されます。
辞書の定義をひとことで言い直すと、正式な場では選ばれない、くだけた言い回しということになります。
日本語の会話では、こういう場面で使われています。
- 「それ、スラングだから試験には書かないほうがいい」=くだけた語なので答案には不向き
- 「ネイティブのスラングが聞き取れない」=教科書に出てこない砕けた語が分からない
- 「若者スラング」=ある世代の中でだけ通じる言い回し
ここで押さえておきたいのは、スラングは「誤り」ではなく「場面の選択」だという点です。
友人との会話では自然でも、面接や取引先へのメールでは浮きます。
文法として壊れているわけではありません。
なお日本語の「スラング」は、英語より意味の幅が広く使われることがあります。
ネット用語や若者言葉、業界の内輪の言い方まで、まとめて「スラング」と呼ぶ人が多いためです。
「スラング」の語源|英語 slang は1756年に何を指していたか
英語 slang が記録に現れるのは 1756年です。
このときの意味は、いまとは違いました。
「浮浪者や盗人のあいだで使われる特殊な語彙」を指す言葉だったと記録されています。
現在のような「生き生きとした、とてもくだけた言葉づかい」という意味になったのは 1818年からです。
つまり slang は、裏社会の隠語 → 一般のくだけた言葉、という順で意味が広がった語だということになります。
語源そのものは確定していません。
辞書にも origin unknown(由来不明)と書かれています。
有力とされている説のひとつは、北欧語からの流れです。
ノルウェー語の slenge(だらりと下がる、放り投げる、ぶらぶら揺れる)、デンマーク語の slænge(投げる、放る)といった語との近さが指摘されています。
古ノルド語には slangi(放浪者)、slangr(羊が群れから離れてさまようこと)という語もありました。
共通しているのは「決まった方向に縛られず、自由に動く」という感じ方です。
この説では、意味の道すじはこう説明されています。
土地・縄張り → その土地で商品を売り歩く人たち → 売り込みの口上 → くだけた言葉づかい、という順です。
ただしこれは推定であって、確定した結論ではありません。
語源が分からないまま使われ続けている語だ、と覚えておくのが正確です。
「スラング」の発音とフォニックス|slang は英米で母音が違う
slang は短い単語ですが、日本語話者がつまずく音が2か所あります。
| 地域 | 発音記号 | カタカナで近い音 | 母音の特徴 |
|---|---|---|---|
| イギリス | /ˈslæŋ/ | スラング | /æ/ のまま(口を横に開く「ア」) |
| アメリカ | /ˈsleɪŋ/ ~ /ˈslɛ̃ŋ/ | スレイング/スレング | ng の前で母音が持ち上がる |
アメリカ英語では、/æ/ が /ŋ/ の前に来ると音が上へ引っぱられます。
bang、sang、hang も同じ現象が起きます。
つまり「スレイング」と聞こえても、別の単語ではなく同じ slang です。
フォニックスで見ると、この語は3つの部品でできています。
- sl-:s と l を続けて出す。母音を挟まない(「スゥラ」にしない)
- -a-:/æ/。口を横に広げて、あごを下げた「ア」
- -ng:/ŋ/。舌の奥を上あごの奥につけて、鼻から抜く。g は発音しない
いちばん多い失敗は最後の -ng です。
「スランググ」と最後に g を足してしまうと、英語には無い音になります。
song、long、king と同じ止め方だと考えてください。
舌をつけたまま、そこで終わります。
日常会話での「スラング」の使い方と例文|線を引く場面
日本語では「スラングだ」「スラングを使う」「スラングっぽい」という形で使います。
- 指摘するとき:「その言い方はスラングなので、書類には別の語を使いましょう」
- 学ぶとき:「映画で出てきたスラングを辞書で確かめる」
- 注意するとき:「初対面の相手にスラングは使わないほうが安全です」
使う・使わないの線引きは、単語そのものではなく相手と場面で決まります。
同じ gonna でも、友人との会話なら自然で、就職面接では雑に響きます。
英語学習者が線を引きやすいように、目安を3つに分けておきます。
- 使ってよい:友人・同僚とのくだけた会話、SNSの短い投稿
- 控えたほうがよい:初対面、目上の相手、社外へのメール
- 使わない:試験の答案、履歴書、契約書、公式な発表文
聞いて分かることと、自分で使うことは別に考えて構いません。
まずは聞き取れるようにしておき、使うのは意味と場面が確実に分かってからで十分です。
英語で「スラング」と言いたいときの正しい言い方
ここで多くの人がつまずくのは、slang の数え方です。
slang は基本的に数えられない名詞として使われます。
1語を指して a slang とは言いません。
| 言いたいこと | 英語 |
|---|---|
| それはスラングです | That’s slang. |
| これはスラングの単語です | It’s a slang word.(⛔ a slang) |
| スラング表現をひとつ教えて | Teach me a slang expression. |
| 彼はスラングを使いすぎる | He uses too much slang.(⛔ too many slangs) |
| その言い方はくだけすぎです | That sounds too informal. |
1語だけを指したいときは a slang word か a slang term と言うのが安全です。
場面を選びたいだけなら、slang という語を出さずに informal(くだけた)や casual(気楽な)を使う手もあります。
Is this word too informal for an email?(この語はメールにはくだけすぎですか)と聞けば、相手も答えやすくなります。
「スラング」と間違えやすい言葉|俗語・ジャーゴン・イディオム
似た場面で使われる語を、英語とセットで並べます。
違いは「誰に通じるか」と「くだけているか」の2点で整理できます。
| 日本語 | 英語 | 誰に通じるか | くだけているか |
|---|---|---|---|
| スラング | slang | 世代・仲間内が中心 | くだけている |
| 俗語 | slang / colloquialism | ほぼ同じ(日本語の訳語) | くだけている |
| 専門用語 | jargon | その職業・分野の人だけ | くだけていない |
| 慣用句 | idiom | 広く通じる | くだけているとは限らない |
| 方言 | dialect | その地域の人 | 関係しない |
| 婉曲表現 | euphemism | 広く通じる | むしろ丁寧側 |
ジャーゴンとスラングは、混同されやすい代表格です。
医師どうしが使う専門語はジャーゴンであって、スラングではありません。
くだけているのではなく、専門的すぎるだけだからです。
イディオムも別ものです。
break the ice(緊張をほぐす)は広く使われる慣用句で、改まった場でも問題なく使えます。
代表的な英語の「スラング」一覧|辞書に載っている10語
ここでは学習用の辞書に見出し語として載っている、当たりのやわらかい語だけを並べます。
| 語 | もとの形・意味 | 使い方の例 |
|---|---|---|
| gonna | going to のくだけた発音を字にしたもの | I’m gonna call you later. |
| wanna | want to / want a の縮まった形 | Do you wanna go? |
| gotta | have got to の縮まった形 | I’ve gotta leave now. |
| kinda | kind of(ちょっと、なんとなく) | It’s kinda cold today. |
| cool | いいね、かっこいい | That sounds cool. |
| awesome | すごくいい | Your idea is awesome. |
| hang out | 一緒にだらだら過ごす | We hung out at the park. |
| chill | くつろぐ、落ち着く | Let’s just chill tonight. |
| guys | みんな(性別を問わず呼びかけ) | Hi, guys! |
| my bad | ごめん、こっちのミス | Oh, my bad. |
この10語のうち、由来がはっきりしているものを2つ挙げます。
cool が「かっこいい」の意味で使われはじめたのは 1933年で、もともとはアフリカ系アメリカ人の話し言葉でした。
広く「いいね」の意味になったのは1940年代後半からで、ジャズの用語を通じて広まったとされています。
awesome はもっと古く、1590年代には「深い畏敬の念にみちた」という意味で使われていました。
「すごくいい」というくだけた意味が記録されるのは 1961年で、広く流行したのは1980年ごろからです。
gonna も突然生まれたわけではありません。
going to の話し言葉での発音を、そのまま文字にしたもので、スコットランド方言の ganna・gaunna という形が1806年から記録されています。
wanna も同じ性質の語で、1824年にはすでに使われていた記録があります。
なお gonna・wanna・gotta・kinda は、話すときは自然でも、書くときは砕けすぎです。
カジュアルなメッセージや会話の書き起こし以外では、going to・want to と書くほうが無難です。
「スラング」を音から覚える|シャドーイング用の練習文
意味を知っていても、耳が追いつかなければ会話では役に立ちません。
短い文を声に出して真似るのがいちばん近道です。
まずゆっくり区切って3回、次に自然な速さで3回。
合計6回で口が慣れます。
- That’s slang. (ザッツ・スラング/米音ではスレイング)
- It’s a slang word.
- Is this word too informal?
- I’m gonna hang out with them.
- Do you wanna grab coffee?
- Sorry, my bad. That sounds awesome.
1が言えないうちに4へ進まないのがコツです。
短い文から順に上げてください。
意識するのは1か所だけで十分です。
最後の -ng で舌の奥を上あごにつけたまま止める。
ここができれば song も long も同じ音で読めます。
「スラング」とつながる言葉のネットワーク
1語だけを覚えるより、同じ方向を向いた語をまとめて覚えるほうが定着します。
| つながり方 | 語 | 意味 |
|---|---|---|
| くだけた側 | slang / colloquial / informal / casual | 俗語の/口語の/くだけた/気楽な |
| 改まった側 | formal / standard / literary / polite | 正式な/標準の/文語の/丁寧な |
| 集団で区切る語 | jargon / dialect / buzzword | 専門用語/方言/流行語 |
| slang と使う動詞 | use slang / pick up slang / avoid slang | スラングを使う/自然に覚える/避ける |
| 形を変えた形 | slangy | スラング的な(形容詞) |
とくに pick up は覚えておくと役に立ちます。
I picked it up from a movie. は「映画で自然に覚えた」という言い方です。
反対側の formal も同時に覚えておくと、場面の切り替えを英語のまま説明できるようになります。
「スラング」が使えるか試す練習問題
読んだだけでは身につきません。
答えを見る前に、口に出して言ってみてください。
- 問題1 「これはスラングの単語です」を英語で
-
It’s a slang word. ── slang は数えられない名詞として使うので、a slang とは言いません。
- 問題2 次のうち「その分野の人にしか通じない語」はどれか ── slang / jargon / idiom
-
jargon。slang はくだけた語、idiom は広く通じる慣用句です。
- 問題3 slang の最後の -ng はどう止めるか
-
舌の奥を上あごの奥につけて、鼻から音を抜いたまま止めます。最後に「グ」を足しません。song や long と同じ止め方です。
- 問題4 「彼はスラングを使いすぎる」を英語で
-
He uses too much slang. ── 数えられない名詞なので too many slangs にはなりません。
- 問題5 gonna をメールで使ってよいか
-
親しい相手への短いメッセージなら自然ですが、仕事のメールでは going to と書くほうが安全です。話し言葉の音を字にした形だからです。
5問すべて口に出して答えられたなら、この語はもう使えます。詰まった問題があれば、その章だけ読み直してください。
「スラング」のよくある質問
- スラングは間違った英語ですか
-
間違いではありません。くだけた場面で選ばれる言い方であって、文法として壊れているわけではないからです。ただし試験の答案や契約書のような改まった文には向きません。場面で選び分ける語だと考えてください。
- スラングと俗語は違うものですか
-
ほぼ同じものです。俗語は英語 slang の日本語訳として使われてきた語で、意味の重なりが大きい言葉です。日本語の「スラング」のほうが、ネット用語や若者言葉まで含めて広く使われる傾向があります。
- 英語のスラングはどこから覚えるのがよいですか
-
まず学習者向けの辞書に見出し語として載っている語から始めるのが安全です。辞書に informal(くだけた)と注記がある語は、意味と使う場面の両方が確認できます。動画やSNSで拾った語は、必ず辞書で裏を取ってから使ってください。
- slang という語の由来は分かっているのですか
-
確定していません。辞書にも由来不明と書かれています。ノルウェー語 slenge(ぶらぶら揺れる、放り投げる)などの北欧語と結びつける説が知られていますが、推定にとどまります。記録に現れるのは1756年で、当時は浮浪者や盗人の隠語を指す言葉でした。
- スラングは英米で違いますか
-
違う語が使われることがあります。地域や世代によって流行のはやりすたりが早いのもスラングの特徴です。長く残る語もあれば、数年で使われなくなる語もあるため、聞き取れるようにしておくことと、自分で使うことは分けて考えるのが安全です。
まとめ|「スラング」はこう覚える
- 意味:くだけた場面で使われる、標準的な言い方から外れた語。誤りではなく場面の選択
- 語源:英語 slang は1756年に「浮浪者・盗人の隠語」として記録。1818年から現在の意味に
- 発音:英 /ˈslæŋ/、米は ng の前で母音が上がり「スレイング」に近い。最後に「グ」を足さない
- 英語で言うなら:数えられない名詞。1語は a slang word / a slang term
- 混ぜない語:jargon は専門用語、idiom は広く通じる慣用句
スラングという語を知っていることと、英語のくだけた語を使い分けられることは別のことです。
この記事の練習文6本を声に出しておけば、次にくだけた語に出会ったとき、意味と場面の両方を落ち着いて判断できます。
出典・参考文献|スラング
この記事の語源・綴り・発音についての記述は、以下の資料で確認しました(最終確認:2026年9月5日)。
- slang の初出年(1756年「浮浪者や盗人の特殊な語彙」/1818年「きわめてくだけた言葉づかい」)と北欧語をめぐる説(ノルウェー語 slenge、デンマーク語 slænge、古ノルド語 slangi・slangr/「土地→そこで売り歩く人→売り口上→くだけた言葉」という意味の道すじ)= Online Etymology Dictionary「slang」
- slang の発音記号(RP /ˈslæŋ/、一般米語 /ˈsleɪ̯ŋ/ ~ /ˈslɛ̃ŋ/)と、由来不明とされていること= Wiktionary「slang」
- cool のくだけた用法の初出(1933年・アフリカ系アメリカ人の話し言葉、1940年代後半に一般化)= Online Etymology Dictionary「cool」
- awesome の初出(1590年代「深い畏敬の念にみちた」)とくだけた意味の記録(1961年、1980年ごろ流行)= Online Etymology Dictionary「awesome」
- gonna が going to のくだけた発音を字にしたものであること(スコットランド方言 ganna・gaunna は1806年から)= Online Etymology Dictionary「gonna」
- wanna が want to / want a の縮約形であること(1824年には記録あり)と、書き言葉では砕けた場面に限られること= Wiktionary「wanna」
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